最初のコツ『機能で分ける』
前回の記事で、Excel資料作成にはコツがあり、そのひとつめが「機能で分ける」だと書きました。
そしてその分ける基準である機能とは資料作成とは何なのか、を分解してみた結果分解された要素で、そのうちExcelが担当するであろう「データを貯める」「貯めたデータを計算する」「計算したデータを配置する」という3つでした。
今回こちらに書くのは、「その機能に分けて、Excelも構成していきましょう。それが資料作成のコツ」ということになります。ただ、何の言い訳もせずにこれを読むと「いやそれ作成のコツじゃないじゃん」なんて話になってしまうので、ちょっとその前提のお話から。
資料作成とは関係無さそうな『Excelの作り方』が何故コツになるのか
なぜ、Excel資料作成のコツについて知りたかったのに、直接的に資料作成と関係のない『Excelの作り方そのもの』の話が始まってしまうのか。それは端的に言ってしまえば『資料は継がれていく』からで、継がれていくから『構造がわかりやすくなっていないといけないから』なんです。
資料は継がれていく
さて、資料は継がれていく、ということはどういうことでしょうか。
普段、皆さまがお仕事で使っているExcelのファイル、全て自分でゼロから作ったもの、どこかの誰かが作ったもの、どちらが多いですか?
「全部、自分でゼロから作ったファイルで仕事してるよ!」なんて人もいるのかもしれませんが、たいていの人は少なからず、「他者が作ったもの」を使ってお仕事をしているのではないでしょうか。この他者が作ったファイルを使って仕事をしている状況を、この『資料は継がれていく』という言葉で表しています。
実際に、よくある資料が継がれていく状況を見てみましょう。以下の図をご覧ください。

01 誕生
まず、誰かが、何かの目的で、Excelファイルを作成します。この段階では、作成者と利用者、管理者が全て同一で、データ更新やエラー対応などがその欲求が発生した段階で、欲求を持った人間によって対応されることになることから、目的が廃れない限りは円滑に運用されていくことになります。生まれたばかりですが、この段階は、非常に意義のあるファイルとなっていることが多い段階です。
02 改良
この段階で、作成者=利用者=管理者の図式が崩れ、作成者=管理者の関係は持ちつつ、作成者≠利用者に変化します。便利なファイル作ったから共有された、とか、「お、それ便利じゃん!頂戴!」的な流れで新たな利用者が出現するタイミングですね。
この段階は初めてファイルが自分意外の誰かに継がれることになるのですが、おそらくその他人と作成者の人間関係はそこまで遠くなくて、使用感のフィードバックや見つけられなかった誤作動確認などのデバッグが進んで、ファイルの完成度が一層高まる時期です。そして、かなり早いですが、このファイルの「全盛期」がここです。
03 自走
そして続いて「自走」の期間に入ります。これは、さらに利用者が広がった段階で、作成者=管理者とつながりがなくとも、同じ会社、とか、同じ部署、とかそういった組織的なつながりの中で拡散し、運用されている状況です。
この段階では「なんかファイルが壊れているけどこれどうすんの?」とか「使い方よくわかんないんだけど、この数式はどういう意味?」とか、作成者=管理者でありつつも、雑多な質問や救援依頼に対応が行き届かなくなって、徐々にほころび始めてくる、でも、それでもなんとか運営出来ている…なんて状況です。
04 引継
次は「引継」のフェーズ。この段階はいよいよ、当初ファイルの作成者=管理者の繋がりが切れるタイミングで、作成者≠管理者となります。
すると、前のフェーズで対応できていた質問や救援依頼なども「本来の意図から離れた解決」になってしまうことが多く、前のフェーズで発生していたほころびが徐々に「あ、これほころんでるね」と、利用者からもわかってしまうような状況です。
会社での運用ファイルだと、このあたりからだんだんと「意味ないから更新しなくても良くない?」とか言い出す声が聞こえてきたりする。
05 陳腐化
このフェーズになると、「なんでこのファイル更新してるんだっけ?」の声が、表面化はしていないけれど利用者の心の中に閉じ込められている状況です。本部が集計しているようなファイルでも、集計担当の事務スタッフは仕事だから黙々と更新しているのですが、その上席は見ていない…というような陳腐化の段階です。
このあたりだと提出漏れが増えたり、もういいんじゃないかな?誰か、これ更新辞めようって言ってくれないかな?というような状況です。
06 ゾンビ化
最終フェーズがこの「ゾンビ化」です。前フェーズで既に死にかけていたのですが、もう完全に誰も本気で使おうとしないし、なんならもう今のオペレーションともかけ離れているから「使えない」と公式に判断されてしまい、もうあとは朽ちるのを待つだけ…という状況です。
このフェーズに入ると、「だったらより良いファイルを作ろうぜ!」といって、このゾンビ化したファイルに残ったかすかな『正気』の部分を拾い上げ、磨き上げ、装飾し、新しい、希望と利便性に満ち溢れたファイルが作られることになります。そしてまた、01 誕生のフェーズに戻るのです。
だから、資料は「わかりやすい構造」が求められる
といった流れで、資料は誕生し、引き継がれ、自壊し、また生まれ変わっていきます。そしてその生まれ変わりの段階で、またおそらく新たな機能が付けたされたり、はたまた利便性を追求して簡単なものになったりします。なので、「継がれていく」ことを前提に、Excelで作成された資料やファイルはわかりやすい構造を持っていなければならないのです。
もし、わかりにくい構造だと、ゾンビ状態運用の期間がただただ長くなるでしょうし、また、きれいに作り直したところで「え?それ、もともとその機能付いてたでしょ?」という、前のファイルと同じ機能を持つ車輪の再発明するだけになってしまうこともありますし。
ということで、今回は機能で分ける理由、「継がれていく」ということについてでした。次回は実際に機能で分ける、ということについて詳細に触れていくことにします。
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