機能で分けるとは?
前回までで、Excel資料作成には3つの機能があることを説明しました。「データを貯める」「貯めたデータを計算する」「計算結果を配置する」の3つです。そして、この3つの機能をきちんと分けて管理することが、実は非常に重要なのです。
なぜ機能を分ける必要があるのか
例えば、こんな経験はありませんか?上司から「去年の同じ時期と比べて、どのくらい数値が変化したのか教えて」と言われて、慌てて過去に作った資料を開いてみたものの、どこにどんな計算が入っているのかわからず、結局ゼロから作り直すことに…。
これは、データを貯める場所で計算もして、その計算結果をそのまま資料として使っているような「機能が混在した」Excelファイルによく起こる問題です。
具体的な分け方
では、具体的にどう分ければよいのでしょうか?最も簡単な方法は、シートで分けることです:
1. 「データ」シート
データシートの作成方法について、もう少し詳しく説明させていただきます:
データシートは、以下の3つの重要なルールに従って作成します:
1. 生のデータをそのまま保存
生データを加工せずにそのまま保存することで、元の情報を失うことなく維持できます。例えば、売上データを入力する際に、「¥1,000,000」と表示形式を変更するのではなく、「1000000」という数値のままで保存します。
2. セルの結合は使わない
セルの結合は見た目は良くなりますが、後々のデータ処理や分析の際に大きな障害となります。例えば、「A社 東京支店」という情報は、「会社名」列に「A社」、「支店名」列に「東京支店」と分けて記録します。
3. 1行に1つの完結したデータを入れる
データベースの考え方を取り入れ、1行には必ず1つの完結した情報セットを入れます。例えば、月次売上データであれば:
– 日付
– 商品コード
– 商品名
– 数量
– 単価
– 売上金額
といった具合に、1取引を1行で表現します。
このような形式でデータを保存することで、後の集計や分析が容易になり、また他のシステムとのデータ連携もスムーズに行えるようになります。
2. 「計算」シート
計算シートの作成方法について、もう少し詳しく説明させていただきます:
計算シートは、データの分析と加工を行う重要な場所で、以下の3つの原則に従って作成します:
1. データシートの情報を参照して計算
計算シートでは、データシートの情報を直接参照することで、データの一貫性を保ちます。例えば、「=データ!A2」のように、データシートのセルを明示的に参照します。これにより、元データが更新された際に、計算結果も自動的に更新されます。
2. 中間計算もここで実施
最終的な結果に至るまでの途中計算も、すべてこのシートで行います。例えば、売上総利益を計算する場合:
– まず売上合計を計算
– 次に経費合計を計算
– 最後に売上から経費を引く
という具合に、段階的な計算過程を明確に示します。
3. 計算式は極力シンプルに
複雑な計算は、いくつかの単純な計算に分解します。例えば、「=IF(SUM(A1:A10)>1000,AVERAGE(B1:B10)*1.1,AVERAGE(B1:B10))」という複雑な数式は、以下のように分解します:
– まずAの合計を計算
– 次にBの平均を計算
– 最後に条件分岐を実行
このように計算を整理することで、後から計算ロジックを確認する際の理解が容易になり、また修正も簡単になります。
3. 「資料」シート
資料シートの作成方法について、もう少し詳しく説明させていただきます:
資料シートは、最終的なアウトプットを作成する場所で、以下の3つの原則に従って作成します:
1. 計算シートの結果を見やすく配置
計算シートで得られた結果を、見やすい形で配置します。例えば:
– 月次の売上推移を表形式で表示
– 部門別の実績を一覧表にまとめる
– 前年比較を並べて表示
など、閲覧者が理解しやすいように情報を整理します。
2. グラフや表組みはここで作成
数値データを視覚的に理解しやすい形に変換します。例えば:
– 売上推移を折れ線グラフで表現
– 構成比を円グラフで示す
– クロス集計表で多角的な分析を表現
など、データの特性に合わせて適切な表現方法を選択します。
3. 提出用の体裁を整える
最終的な見栄えを整えます。具体的には:
– 社内の様式に合わせたヘッダーやフッターの設定
– 適切なフォントサイズや行間の調整
– 印刷時のページ区切りの確認
など、実務で使用する際の利便性を考慮した調整を行います。
このように資料シートを整えることで、データの分析結果を効果的に伝えることができ、また定期的な報告資料としても活用しやすくなります。
分けることのメリット
このように機能を分けることで、以下のようなメリットが生まれます:
1. データの更新が容易
– 元データを更新するだけで、計算結果も資料も自動的に更新
2. 計算ロジックの確認が簡単
– 計算がまとめられているので、どんな処理をしているか一目瞭然
3. 資料の再利用が可能
– 別の目的で似たような資料が必要になった時、計算シートを少し修正するだけで対応可能
まとめ
「機能で分ける」というのは、一見面倒に感じるかもしれません。しかし、これは将来の自分や同僚のために必要な「投資」なのです。今少し手間をかけることで、後々の作業効率が大幅に向上します。
次回は、もう一つの重要なコツである「データは弱く」について、具体的な方法を解説していきます。
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